前後で位置が異なる被写体にピントを合わせる方法
前後で位置が異なる(奥行きがある)動物の撮影では、どちらかにピントが合い、どちらかはボケるといったような写真になりがちです。
「できれば全てにピントを合わせたい!」といった時に、覚えておくと役に立つ方法です。
撮影のカギは被写界深度です!学校の集合写真のように全ての人にピントが合っている写真をパンフォーカスと言ったりもします。
目次
全ての被写体にピントが合っている写真の撮影
次の写真は3匹のエゾモモンガの写真です。こちらは3匹にピントが合い、とても可愛い集合写真になっています。
簡単そうに写した写真に見えますが、この写真はただF値を「絞る」だけでは撮れないのです!それはなぜかというと、横から見るとわかります!
実はこれだけ奥行きがあります。もしこの画角ですべてにピントを合わせるとなるとF16ぐらいに絞らなければなりません。だけどエゾモモンガの撮影は光量が少なくなる日の入り前後が多いので、絞りすぎるとシャッター速度が出なくなる、またはISOが上がりノイズだらけとなります。つまり「絞る」といってもF16ほど絞ることはできないのです。
ちなみにこんなに奥行きがあると知らずに、少し「絞る」だけで撮影した写真があります(以下の写真)。前の被写体にピントを合わせると、後ろの被写体のピントが甘くなり、後ろの被写体にピントを合わせると前の被写体のピントが甘くなっています。焦点距離400mmで撮影したものを少しトリミングしています。
遠目で見ればわかりませんが、帰ってきて編集しようとしたらピントが甘いのが気になってしまいます。どうせ撮るなら綺麗な写真を撮りたいと思います。では、こんな時はどうすれば良いのか!撮影のカギは被写界深度を理解するです!ちょっとした工夫をすれば大丈夫です!
被写界深度を理解すれば、全てにピントが合う!
ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のことです。「絞り」の他に「焦点距離」と「撮影距離」が関係しています。野生動物が相手の場合「撮影距離」を遠くすると枝や障害物が入ってしまう場合があるため、次の選択肢として「焦点距離」で調整することをおすすめします。特性を以下にまとめました。
「焦点距離」での調整とはどういうことかというと、被写界深度は望遠になればなるほど浅くなり、前後で良くボケるようになります。反対に広角になればなるほど深くなり、ボケが少なく全てにピントが合います。つまり、今回の場合「絞る」だけでなく、「広角」気味で撮影することがポイントです!広角で撮影した後でトリミングすれば全ての被写体にピントが合った写真の完成です。以下は焦点距離400mm→270mmにして「広角」気味に撮影した写真からトリミングした例です。トリミングも最近のカメラは画素数が多いため心配ありません。
また、ピント位置も3匹の被写体の前後の中間あたりに合わせました。万が一ピントがずれていたら全て失敗写真になるため、数枚撮影したら、再度ピントを合わせて数枚撮影をするを繰り返していました。野生動物の撮影では2度とないチャンスもありますのでリスクを分散した撮影はとても大切です。
その他に気を付けること!撮影上達への道!
撮影のコツがわかったら最後は細かい設定です。撮影で使用した機材は「使用機材について」で紹介しています。
シャッター速度とISO
許容できるISOを選び、それに応じたシャッター速度となるようにしましょう!ちなみに筆者は絞り優先モードで①絞り6.3②ISO3200に設定しシャッター速度はAUTOとしていました。しかし、暗くなっても被写体が出てこないため、シャッター速度が出せなくなり、ISO6400に設定変更しました。このタイミングで被写体が巣穴から出てきて、シャッター速度1/10で撮影ができました。
電子シャッター
シャッター速度が出せない撮影には「電子シャッター」の使用がおすすめです。ミラーレス機のメカシャッターだとシャッター時の機器の動きで軽いブレが生じてしまいます。一眼レフ機もレフが動くショックでブレが生じてしまいます。電子シャッターであればそういった心配がなく、また他のシャッター方式よりも連射多いため、何枚も撮影できます。とりあえず撮影しておけば数枚はブレていない写真が撮影出来ているはずです。
三脚・雲台・レリーズ
〇三脚
ブレないように三脚は必須です。重くて頑丈なものが良いです。筆者はGITZO(ジッツオ)の5型を使用しました。
〇雲台
雲台は価格が安いけれど、安定感があり固定や取り外しがスムーズにできるマンフロットのMVH502AHを使用しました。
〇レリーズ
また、シャッターを押す際にもブレが生じますので、レリーズも必須です。こちらはCANON純正のレリーズRS-80N3を使用しました。
最後は編集ソフトで仕上げる!
最後は編集ソフトです。やはり仕上げには編集ソフトが必須です。最近のソフトはノイズ除去や高画素化などが出来るため、非常にきれいな仕上がりとなります。「パソコンと編集ソフト」でも紹介しましたが、当サイトではAdobeの「lightroom」を使用して編集を行っています。手順は次の通りです。
①明るさ・彩度・色温度・シャドウ・ハイライト・白レベル・黒レベルの調整
②かすみ除去・コントラスト・明瞭度・シャープの調整
③ノイズの除去
といった手順で編集を行いました。元の写真がしっかりと撮影出来ていれば、編集でほとんど手を加えずに済みます。ですので、まずは被写体をしっかりと写すことが大切です。最近では高性能な加工ソフトやノイズ除去ソフトが販売されるようになりましたので、ピントが甘い写真でも、ノイズがひどい写真でも諦めることなく、編集次第では納得のいく1枚になるかもしれません。
最後に別の例(可愛い写真)を紹介して終わりにします。真ん中から2匹出てきました。こんな時はF値を小さくしても2匹にピントが合います!F2.8で焦点距離は400mmで撮影しています。そして編集で少しトリミングしています。