星の軌跡(ぐるぐる)の撮影と編集方法
星空(星景)撮影の中で星の軌跡を撮影する方法があります。星のぐるぐる撮影(星グル)、スタートレイル撮影、などとも言います。
この撮影には大きく2種類の方法があり「長時間露光」と「比較明合成」に分けられます。
「長時間露光」は長時間シャッターを開けっぱなしにする撮影方法で、出来上がる写真は1枚なので、メモリーカード容量が少なく済みます。しかし、露出が難しく失敗しやすい撮影方法となります。
「比較明合成」は連続して何枚も撮影し、編集ソフトで明るい場所だけを繋ぎ合わせる方法です。写真の枚数と合成する手間がかかりますが、撮影の設定が簡単(通常の星空撮影と一緒)なことやタイムラプス動画への応用ができます。
目次
長時間露光とは?
長時間シャッターを開けっぱなしにする撮影方法です。ずっとシャッターを開けているのでうっかり光を照らしてしまったり、カメラを揺らしてしまったりすると失敗します。また、カメラの設定(露出)が難しく「暗すぎ」たり「明るすぎ」たり、して思い通りの写真を写すのには経験が必要です。
カメラの設定
撮影モードは「Mモード(マニュアルモード)」を使用しますが、カメラの設定は通常の星空(星景)撮影と異なります。
①F値
F4~14程度に絞ります。撮影時間(シャッターを開けて置く時間)を延ばせば延ばすほど絞ります。明るいレンズを使用しなくても撮影できます。
②ISO
400~800程度。撮影時間(シャッターを開けて置く時間)を延ばせば延ばすほど小さくします。個人的にはISO800をベースにして、時間を延ばすならF値を絞るという考えで撮影しています。
③シャッター速度
どの程度の星の軌跡を撮影したいかによって変わります。一度試し撮りで3分程度の撮影をしてみることをおすすめします。
撮影例
以下に約10分の撮影例を載せておきます。だいたいこのぐらいの設定でこの軌跡になります。北側を向けて星の軌跡を撮影しようとすると北極星から離れれば離れるほど星の動きは大きくなります。(北極星→Wikipedia)
比較明合成とは?
比較明合成は通常の星空(星景)撮影で撮影した写真を連続で何枚も撮影し、順番に1枚ずつ「明るい場所だけ繋ぎ合わせた合成写真」です。
カメラの設定
「星空(星景)の撮影方法」と同じ設定で、撮影モードは「Mモード(マニュアルモード)」を使用します!
①F値
開放から1段絞った程度にします。明るいレンズ(F1.2、F1.4、F2.0、F2.8など)を使用します。
②シャッター速度
10~25秒程度にします。
③ISO
1600~6400程度にします。シャッター速度を短くしたい場合はISOを上げる。
撮り方
カメラを「連射」設定にしてレリーズを「ON」の状態で保ち、シャッターを切り続けましょう!
当サイトではCANON純正のレリーズRS-80N3を使用しています。
メモリーカードの残量とバッテリーの残量には注意が必要です。
バッテリーを長時間持たせるためのコツも紹介しています!以下の「ミラーレスカメラのバッテリー問題」からご覧下さい。
ミラーレスカメラのバッテリー問題
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撮影例
以下に約20分の撮影例を載せておきます。約60枚の写真を比較明合成しこの軌跡になります。南側を向けて星の軌跡を撮影しようとすると星の動きは全体的に一定です。
長時間露光と比較明合成の比較
2種類の撮影方法はそれぞれ利点欠点がありますので、まとめてみました。
「比較明合成」は良く見ると繋ぎ目が分かります。
「長時間露光」はこの他に長時間露光ノイズがあります。
長時間露光ノイズとは?
長時間露光ノイズは別名「熱ノイズ」といってセンサーの熱が原因で起こるノイズのことです。対策として「長時間ノイズ低減モード」があります。このモードは撮影した時間と同じ時間使いノイズ除去をするので、時間に余裕があれば使用しましょう。高感度ノイズ低減とは違いディテールが損なわれないです。
時間に余裕がないという方は、近年の編集ソフトはノイズ除去が高性能になってきていますので、編集ソフトの「ノイズ除去」で対応しても十分です。
当サイトでは比較明合成を使用するようにしています。なぜならタイムラプス動画に編集できるからです。以下の動画の最後の星空は比較明合成用に撮影した写真を編集して作成しています。
撮影後の編集方法!軌跡の出し方
星の軌跡を撮影した後、ちょっとした編集をくわえることで軌跡が綺麗に出てきます。特に比較明合成は編集で見え方が変わってきます。
長時間露光編
以下はAdobe「Lightroom」での編集方法です。
①ハイライト・露光量の調整(ハイライト部分を下げる)
②明瞭度の調整(明瞭度を上げる)
③コントラスト・かすみ除去の調整(明暗をはっきりさせる)
④①~③の繰り返し(微調整)
⑤白レベルの調整(白レベルを上げて軌跡を強調させる)
写真によっては他の調整でも軌跡を出す(強調する)ことができますので、一度ステータスバーを動かして調整してみるといいでしょう。
比較明合成編
以下はAdobe「Lightroom」での編集方法です。比較明合成は手間がかかります。
①まずは使用する範囲の写真の1枚目を編集する。基本的には長時間露光時の編集と同じです。ここでは星の光が際立つように編集しましょう。
②比較明合成する全ての写真に同じ編集をする。(設定をコピーしてペーストする)
何度も言いますが、この①の編集はしっかりと行いましょう!ここで弱い光の星をしっかりと出しておくと比較明合成した時に、くっきりと軌跡を描くことができます。
以降は編集ソフトによって方法が異なります。以下はAdobe「Photoshop」とcanon「DPP(Digital Photo Professional )」を使用した2種類の方法です。
Photoshopを使用した比較明合成
RAWのままで編集できます。しかし、PhotoshopのPSDファイル保存は2GBが限界ですので、1度に全ての合成はできません。10枚程度の合成を繰り返す必要があります。
①合成したい編集後の写真10枚を選択する。
②「写真」→「他のツールで編集」→「Photoshopでレイヤーとして開く」を選択します。
③Photoshopが起動します。画面の「種類」欄から「比較(明)」を選択します。
④「レイヤー」→「レイヤーを結合」を選択します。
⑤最後に「ファイル」→「保存」で終了します。
⑥自動的にLightroom上にも反映されます。
⑦これを行いたい枚数分繰り返します。(例:50枚の比較明合成の場合→10枚×5回。そして最後に5回出力した5枚を比較明合成します。)少し手間がかかりますが、RAWのまま編集したい方におすすめの編集ソフトです。
canon用編集ソフトDPPを使用した比較明合成
まずは全ての写真をJPEGで「書出し」ます。
①書出した全ての写真を「専用フォルダ」に入れます。
②DPPを起動し「専用フォルダ」を開きます。
③1枚目の写真を選択します。
④「ツール」→「多重合成ツールを起動」を選択します。
⑤「合成する画像」欄から、合成したい画像を選択します。
⑥「合成方法」欄から、比較(明)を選択します。
⑦合成を続ける場合は「続けて合成」を選択、合成を終了し出力する場合は「名前を付けて保存」を選択します。
1枚ずつ合成しなければならないので手間がかかりますが、1枚ずつ確認し確実に行いたい方には便利な編集ソフトです。当サイトではDPPを使用して比較明合成をしています。